校長からのメッセージ

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第26回 フランダースの犬――戌年にちなんで

 新年明けましておめでとうございます。
 今年は戌年です。犬は古くから人にかわいがられてきました。縄文時代、加曽利貝塚からも人とともに埋葬された犬が出土されています。そのくらい大昔から、犬は家族の一員として飼われて過ごしてきました。最近は猫を飼う家が多くなってきたようですが、犬に服を着せておしゃれさせて散歩する人をよく見かけます。
 渋谷駅には忠犬ハチ公の銅像があって、待ちあわせの場所として有名です。ハチ公は主人にとてもかわいがられて、玄関先や門の前で主人を見送り、時には、渋谷駅まで送り迎えすることもありました。主人が急死した後も10年あまり、夕方になると駅まで行って帰りを待った。ハチ公はそういう忠実な犬です。
 さて、犬が登場する物語はいろいろとあります。そのなかで、私が小さいときに絵本で読んで感動し、その後も、思い出すことの多いのが『フランダースの犬』です。読んだ人が多いでしょうが、ストーリーをごく簡単に話します。
 主人公はネロという少年です。ある夏の昼下がり、金物屋にこき使われてムチで打たれて犬が倒れていました。あまりにもかわいそうで、祖父とネロは家に引き取り、パトラッシュと名づけて介抱し、育てていきました。貧しい牛乳運びの家で暮らすネロは、村一番の金持ちの家のアロアと仲良しでよく遊びました。しかし、アロアの父は貧しいネロを見下して遊ばせないようにさせました。
 闊達なネロは生まれつき絵を描くことが好きで、小遣いをためて買った絵の具で絵を描いて楽しんでいました。15歳になったネロは、町で絵のコンクールがあると知り、倒れた木に腰を下ろす老人の絵を半年もかけて描きました。疲れ果てた老人が一人、寂しげに物思いにふける絵で、仕上がっていく絵をパトラッシュはいつも横に座って見つづけていました。
 しかし、入選は叶わず落ち込んでいると、悪いことが次々に起こりました。アロアの家の物置が火事に見舞われると、火をつけたのはネロだと言いふらされ、また、かわいがってくれていた祖父が逝去して、家の借金を返すことができなくなりました。
 この村にはもう居られないと観念したネロは、雪降る道を倒れながら町の方に向かいました。パトラッシュには悪い予感が走って家を飛び出し、ネロの足跡を探しながら追いかけました。
 『フランダースの犬』はこういう物語ですが、このあとに訪れる結末は何とも哀れで悲しくて、しんみりと絵本を読みました。
 
 村を去ったあくる日です。村人たちが捜していくと、町の教会のルーベンスの絵の前で、ネロはパトラッシュを抱きかかえて冷たくなっていました。実は、絵を描くことの好きなネロは、教会の大聖堂にルーベンスという画家の崇高な絵が飾られていることを聞き知って、その絵を一度見たいと思う日々を送っていたのです。
 教会に何度か見に行きましたが、絵を見るには入場料を払わなければならないと突き返されました。大きくなったらルーベンスのような画家になるんだ。そのように密かに誓って絵を描きつづけるネロであったのです。
 そして、最後、最後に、一目ルーベンスの絵を見たいと、雪道を教会に向かったネロだったのです。その夜はクリスマスイブで、扉は開けられたままになっていて、ネロはルーベンスの大作を見上げながら、パトラッシュを抱いて静かに息を引き取ったのです。
 著名な画家が訪れてきました。ネロの絵こそ入選に値する。ネロには素晴らしい素質と将来性があるので、この子を引き取って絵を教えたい。そう言いましたが、それはあとの祭りとなりました。
 以上が大まかな『フランダースの犬』のあらすじです。
 このお話はとても悲しい悲劇として成り立っているのですが、大人になってあらためて考えると、著者が私たちに伝えたかったのは、「子どもというのは、一途にまっすぐ生きる人間だということ」ではないかと思うようになりました。
 つまり、子どもというのは、ほんものにあこがれて、そのほんものに近づこうと願ってひたむきに生きていこうとしている。だから、大人は子どものひたむきなその思いに応えていかなければならない。このように教えてくれているのが、『フランダースの犬』だと思うようになったのです。
 2018年、生徒一人ひとりが、ほんものにあこがれて自らを磨き、ひたむきに生きていくことを願って、新年の話とします。

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