校長からのメッセージ

校長からのメッセージ

第31回 千葉経済大学附属高校卒業式式辞(令和2年3月1日)

 本日、新型コロナウイルスの感染が拡大する状況のなかで、異例のカタチにはなりますが、このように卒業証書授与式を挙行できますことを喜びたいと思います。
 576名の卒業生の皆さん、おめでとうございます。皆さんの輝かしい未来が、限りなく開かれていくことを心から祈っています。また、式典にはご出席いただくことが出来ませんでしたが、保護者の皆様には、18年にわたるご家庭での養育に、心から敬意を表します。
 本日は、元号が令和になって、初めての卒業式です。「令和」という元号は万葉集からひかれていて、「人々が美しく心を寄せ合う中で、文化が健やかに生まれ育つ」ことを願って選ばれました。
 私たちの学校では、7月に新しい体育館が竣工し、その後キャンパスが見違えるように整備されて、令和の時代のいい幕開けとなりました。しかし、千葉県とすれば、秋になって2度の台風と集中豪雨に見舞われて甚大な被害を受け、そしてまた、本日はマスク着用の卒業生のみの式典となっています。
 令和という元号に込めた願いを叶えるためには、聡明に知恵を絞って生きていくことが欠かせない。このことを胸に刻みたいと思います。
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 さて、新しいステージに颯爽と歩み出す皆さんの餞(はなむけ)に、どの言葉を贈ったらいいか、いろいろと考えました。その結果、慣れ親しんでいて口にすることのできる論語の教え、「朋有り遠方より来る、亦た楽しからずや」を贈ることにしました。
 志を同じくする友が、はるばる遠くから訪れてきて共に時を過ごす。なんと楽しいことか。孔子はこのように心に湧き上がる感慨を、弟子たちに述べました。皆さんは千葉県の各地、そして県外の各地から入学してきて、もうすっかり本校の校風を身にまとってこの場にいます。
 この3年間には、楽しいことばかりでなく、辛いことや悔しいこともあったに違いないのですが、心をひらいて話し合える友と出会い、立派な社会人に成長するための階段を1段1段上って本日を迎えました。
 卒業して後も、「朋有り遠方より来る亦た楽しからずや」という感慨を大事にもちつづけて、多くの人たちとの出会いを楽しんで、人生を豊かに歩んでいってほしいと願います。
 ところで、この言葉を令和2年の3月に巣立っていく皆さんに贈ることにしたことには、別の意味合いがあります。あと5か月です。7月24日から東京オリンピック、8月25日からパラリンピックが開幕します。
 4年に1度しか巡ってこない、このスポーツの祭典を目に焼き付けようと、全世界の各地から数百万人の人たちが日本に訪れてきます。世界の超一流のアスリートたちが日本に集結して、熱くプレーして「世界の頂点」を目指します。朋有り遠方より来る、亦た楽しからずや、このような機会はまたとないことです。
 東京オリンピックの開催されるこの年に卒業する皆さんに、贈るにふさわしい「朋有り遠方より来る亦た楽しからずや」です。暑いなかでの開催となりますが、テレビで観戦するだけではなく、試合会場に出かけて、世界の各国から訪れている人たちと笑顔で片言でも交わしてみましょう。
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 11月の創立記念日に、パラアスリートの初瀬勇輔さんをお迎えして、講演していただきました。演題は「行動することで自分を変え、世界を変える」でした。目で見るという機能を半ば失った初瀬さんは、障碍者柔道に出会って、生きていく道を見つけました。その人生を語りながら、パラスポーツに私たちの目を開かせてくれる講演でした。
 パラリンピックについて、さらに思いを広げます。7年前、皆さんが小学5年生のときのIOCの総会で、オリンピック開催が東京に決定しましたが、そのとき、笑顔でスピーチした佐藤真海さんを覚えているでしょうか。
 佐藤さんは「私がここにいるのは、スポーツによって救われたからです。スポーツが人生で大切なことを私に教えてくれたからです」と英語で語り出しました。
 高校時代は陸上競技の選手で、大学ではチアリーダーとして活躍していた佐藤さんは、19歳のときに骨肉腫によって右足を失いました。そのとき母から送られた言葉は、何であったか。それは「神様は、その人に乗り越えられない試練は与えない」でした。
 この言葉をしっかり受けとめて、佐藤さんは義足で走り幅跳びの世界に入りました。助走して踏み切って、ふわりと宙に浮いて着地する。その時間が少しずつ伸びていくごとに、自分の可能性が開かれていく喜びを味わう日々が始まったのです。
 その佐藤さんが「スポーツのもつ力」をさらに強く感じたのは、東日本大震災のときです。気が滅入って沈みこんでしまっている子どもたち、故郷の気仙沼の子どもたちがスポーツを通して自信を取り戻していく。その姿を目の当たりにしたからです。
 被災地の小学校に何度も何度も出向いた佐藤さんは、子どもたちに笑顔で語り、ともに走ったりしました。東北の各地には、日本ばかりでなく世界から200人を超えるアスリートが1000回を超えて訪れ、子どもたちは、あこがれるアスリートたちと間近に出会うことで、もちまえの笑顔を取り戻し、「くじけるものか」と生きる気力を奮い立たせました。
 日本をさらに元気づけてほしい。佐藤さんはそう語ってスピーチを終えました。あれからもう7年が経ちました。
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 いよいよこの夏に、幕張メッセではフェンシング・レスリング・テコンドーのオリンピックが行われます。そして、パラリンピックではゴールボール・シッティングバレーボール・車いすフェンシング・テコンドーが行われます。
 はるか遠方から訪れて来る、多くの世界の人たちを「おもてなし」の心で迎えて、「日本は素敵な国だ」と心から喜んで帰国してもらう。そういう機会に恵まれて、2020年に本校を巣立つ皆さんです。「朋有り遠方より来る、亦た楽しからずや」
 コロナウイルスの感染が終息して、東京オリンピックを全世界で楽しむ夏になることを祈ります。
 最後に一言、卒業生の皆さん、卒業した後も、折にふれて本校のホームページを開いてみて、後輩たちの活躍する様子や母校が発展している姿を目にしてください。そして、「がんばる後輩を、応援するぞ」と熱いエールを送ってください。
 また時には母校を訪ねて、9階の展望レストランから千葉市を一望して、あらためて晴れやかな気もちを味わってください。以上、皆さんの前途洋々たる大海原への船出を祝って学校長の式辞とします。

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